新民謡風土記−芦北−
@湯の児(ゆのこ)、湯出(ゆのつる)、湯浦(ゆのうら)かけて
つづく湯の里湯のけむり
うぶ湯この方芦北(あしきた)育ち
熱い情けはうまれつき
Aみなと水俣いつきてみても
出船入船泊まり船
たまにゃもめても日窒(にっちつ)仲間
もちつもたれつ伸びてゆけ
B孝女千代塚(ちよづか)松吹く風も
胸にしむよな物がたり
時世うつればぜひないものか
人の心のうらおもて
※千代女は津奈木(つなぎ)の生まれ、極貧の中祖父に仕えて孝養到らざるなく農耕の時には馬にのせて畑に行き木蔭に休ませて独り労働に従事したといわれる。絵(筆者注:原著『顧望』には挿絵が掲載されている)は藩公の賞与を受ける千代女。
※筆者注:日窒とは日本チッソ株式会社のこと。水俣はチッソの城下町といわれ、チッソに賠償を請求する水俣病患者に対する厳しい眼があった。