新民謡風土記−阿蘇−

@ここは火の国わけても阿蘇は

 いつの頃から燃えてやら

 裾野(すその)十里は南も北も

 招く穂すすき湯のけむり

A神代(かみよ)このかた変わらぬ血筋

 祀(まつ)る社(やしろ)は一ノ宮(いちのみや)

 朝の太鼓がどんどと鳴れば

 鷺(さぎ)が飛びますしらしらと

B孝女白菊(しらぎく)歌よりないが

 仕事のこした 柴三郎(しばさぶろう)

 山家(さんか)育ちの小僧がやがて

 日本医学を背負(しょ)って立つ

 

※「孝女白菊」は井上巽軒(いのうえそんけん)の漢詩を落合直文(おちあいなおふみ)が和文にした長編叙事詩。

※阿蘇神社は神武天皇の御孫健磐竜命(たけいわたつのみこと)が祭神で、その子孫阿蘇家が世々宮司(ぐうじ)を勤める。

※北里柴三郎(きたざとしばさぶろう)は小国町(おぐにまち)の出身、破傷風(はしょうふう)、ジフテリー、ペスト等の研究で世界的に知られる細菌学者(嘉永5−昭和6)

 

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