新民謡風土記−鹿本−

@山鹿灯籠(やまがどうろう)は夜明かしまつり

 踊りつかれた娘()がいとし

 霧の大橋あとふり返りゃ

 別れともない湯のけむり

A来民(くたみ)自慢は名代(なだい)の団扇(うちわ)

 夏は日本の風を呼ぶ

 のちの総理も小僧の頃にゃ

 味噌をすったか妙照寺(みょうしょうじ)

B国のためなら散らねばならぬ

 可惜(あたら)三玉(みたま)の若ざくら

 波濤(はとう)万里(ばんり)のシドニー湾に

 過ぎた暴風雨(あらし)のあとさびし

 

※後の総理大臣清浦圭吾(きようらけいご)は来民妙照寺の小僧であった。

※軍神松尾敬宇(まつおたかひろ)中佐は大戦の初め特殊潜航艇でシドニー湾に玉砕(ぎょくさい)した。母堂(ぼどう)まつ枝刀自(とうじ)の歌に「国のため散れと咲かせし花なれどあらしの後の庭さびしけれ」とある。

 

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