古城風物誌−くらがり御門−

@さくら吹雪の城壁を

 めぐりてのぼる道の隈(くま)

 千畳敷の下という

 くらがり門のあとどころ

A戦塵(せんじん)いまだ去らぬ世に

 城の機密をうかがえる

 間者(かんじゃ)をここに誅(ちゅう)せりと

 くらがり門の名は厳し

B古城の春はたけなわに

 欅(けやき)の大樹若葉して

 浅黄(あさぎ)の空に匂うとき

 くらがり門の夢いずこ

 

※宇土櫓前から本丸天守閣へ上る途、ジグザグの城壁に挟まれ、かつての千畳敷の床下を通るトンネルにくらがり御門はあった。鉄の灯燈が昼も薄暗く懐疑の闇を照らしていたという。

 

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