古城風物誌−長塀の賦−
@白線遠くひきはえて
旅情の瞳先(ま)ず捉(とら)う
ここ長塀に古城(ふるしろ)の
輪奐(りんかん)の美は思うべし
A西南役に殉(じゅん)じたる
勇士のみ霊(たま)今いずこ
春風寒き石ぶみに
有為転変(ういてんぺん)の空しさよ
B壷川(こせん)の流れ濁れども
若草めぐむ日だまりに
すみれはすでに花つけて
やすらぎの世を謳(うた)うかな
※行幸橋畔熊本城址碑のあるところには戦前谷村慶計介の銅像があった。計介は西南役に密使として苦心の末城内外の連絡をとったが、間もなく田原坂で戦死を遂げた。銅像は講談師山下宇太郎の尽力によって建てられたもので、戦時中軍需のため撤去供出された。