思い出十二か月−梅雨の日 六月−

土蔵のある家

 

  梅雨の日

 

梅雨のある日の蔵の中

遊びつかれて何気なく

あけた朱塗(しゅぬり)の長持(ながもち)

背丈ほどあるお角力(すもう)

五月人形が立っていた

 

わたしの初のお節句に

姉が祝ってくれたのを

幼ごころにこわがって

蔵に入れたと聞いていた

その人形がこれだった

 

うす暗がりの蔵の中

じっとにらんだ関取の

大きな眼玉から顔

あわてて蔵をにげだした

あれは五つか六つのころ

 

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