思い出十二か月−夜ざくら 四月−
夜桜
夜ざくら
裾野(すその)を青くにじませて
春はかすみがつれてくる
歩みのおそい山国も
吉野(よしの) 虎の尾 紅普賢(べにふげん)
牡丹(ぼたん)ざくらと八重一と重
咲きつぐ花につつまれて
こどものゆめもふくらんだ
母とあるいたその宵(よい)は
虫の羽音(はおと)も聞けそうに
咲きしずもった夜ざくらの
奥に暈(かさ)着たおぼろ月
花には花の影おいて
梢(こずえ)を仰ぐ母と子も
やさしくじっと抱いていた
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